早食い卒業!咀嚼という食べ過ぎ防止術
- 8月10日
- 読了時間: 6分
「もう5回だけ多く噛む」。たったそれだけで、食べるスピードや満腹感、食後のだるさまで変わります。

ここでは噛むこと(咀嚼)が体に起こす変化をやさしく解説し、和食のスタイルを使って無理なく実践する方法までまとめました。🍵🥢
目次
咀嚼の科学:なぜ噛むと体が変わるの?🧠
解説:噛むと、食べ物が小さく砕けるだけではありません。口の中での「噛む・味わう」という刺激が神経を通じて胃腸に伝わり、消化の準備が始まります(脳相=セファリックフェーズ)。同時に、腸から満腹に関わるホルモン(GLP-1、PYY、CCKなど)が出やすくなり、お腹が空いたサイン(グレリン)は弱まります。さらに、噛んで味わう行為は**食後の消費エネルギー(DIT)**を少し押し上げる可能性もあります。
まとめ
噛むと、体は「これから消化するぞ」と準備を始める
満腹ホルモンが出やすくなり、空腹サインは弱まる
よく噛むと、同じ食事でも消費エネルギーがわずかに上がることがある
参考文献
Hamada Y, et al. Sci Rep. 2021:咀嚼が食後DITを増やす可能性を示した研究。
Teff KL. Appetite. 2011:セファリックフェーズ反応のレビュー。
食べる速さ・咀嚼回数と摂取量の関係🍽️
解説:ゆっくり食べる人ほど、一回の食事で食べる量が少なくなりやすいことが多くの研究で確かめられています。噛む回数を増やすとペースが自然に落ち、満腹のサインが食事中に間に合うので、食べ過ぎを防ぎやすくなります。短い期間でも効果が出やすい、始めやすい工夫です。
まとめ
食べるのが遅い=食べ過ぎにくい
噛む回数を増やすと、満腹サインが早く届く
短期でも変化が出やすい
参考文献
Robinson E, et al. Am J Clin Nutr. 2014:食べる速さと摂取量のメタ解析。
Zhu Y, et al. Physiol Behav. 2014:徹底咀嚼の影響。
ホルモンと満腹シグナル:GLP-1/PYY/CCK・グレリン🧪
解説:ゆっくり・よく噛むと、健康な成人ではGLP-1やPYYが上がり、満腹感が出やすくなる傾向があります。ただし、2型糖尿病の方では、このホルモンの反応が小さくなることがあります。最近は、野菜を先にしっかり噛むと、これらのホルモン反応が高まりやすいという報告も出ています。
まとめ
よく噛む → GLP-1・PYYが上がり、満腹感も上がる(健常者で顕著)
2型糖尿病では反応が弱いことがある
野菜をしっかり噛むことも有効
参考文献
Kokkinos A, et al. J Clin Endocrinol Metab. 2010:ゆっくり食べでGLP-1/PYY↑。
Sonoki K, et al. Endocr J. 2013:1口30回咀嚼とGLP-1(T2Dでは増えず)。
Kamemoto K, et al. Sci Rep. 2024:刻んだ野菜をよく噛むとインクレチン↑。
満腹中枢と空腹中枢:噛むと脳はどう反応する?🧩
解説:「お腹いっぱい」「まだ食べたい」は、脳の中のスイッチ(満腹中枢と空腹中枢)が決めています。噛むと、口や胃腸からの合図が神経を通って脳に届き、空腹側のスイッチが静かになり、満腹側のスイッチが入りやすくなります。さらに、胃がふくらむ刺激や、GLP-1・PYY・CCKといった腸のホルモンも満腹側を後押しします。早食いだと、この連絡が遅れ、「まだ足りない」と感じる時間が長くなりがちです。
まとめ
噛む→脳に「食べているよ」という合図が届き、空腹モードが落ち着く
胃のふくらみやホルモンが満腹モードを強める
早食いはこの合図が追いつかず、食べ過ぎにつながりやすい
参考文献
Berthoud HR. Nat Rev Neurosci. 2011:摂食行動の神経回路レビュー。
Sakata T. Neurosci Biobehav Rev. 2003:咀嚼・ヒスタミン神経と摂食調節。
血糖・インスリン・食後代謝(DIT)📈
解説:食べ方は血糖の上がり方にも影響します。野菜→主菜→主食の順で食べたり、ゆっくり噛んで食べると、食後の血糖やインスリンの上昇がゆるやかになりやすいことが報告されています。また、よく噛んで味わうと、**食後に消費するエネルギー(DIT)**が少し増えることもあります(個人差はあります)。
まとめ
野菜から食べると、食後の血糖・インスリンの上がり方が穏やかに
よく噛むと、食後の消費エネルギーが少し増えることがある
効果の大きさは食事内容や体質で変わる
参考文献
Imai S, et al. Nutr Diabetes. 2013/J Clin Biochem Nutr. 2014:野菜先食いの介入研究。
Hamada Y, et al. Sci Rep. 2021:咀嚼でDIT↑。
子ども vs 大人:影響の違い👨👩👧
解説:子どもは、食べる速さが体重や食べる量に直結しやすい傾向があります。家庭で食卓の時間を10分延ばすだけでも、果物や野菜の摂取が増え、食事の質が上がったという研究もあります。大人にも遅食は有効ですが、子どもには**置き箸やタイマーなど、ペースを落とす“合図”**が特に役立ちます。
まとめ
子ども:速食い→食べ過ぎ・体脂肪↑のリスク
家族の食卓+10分→食事の質が上がる
合図デバイスや置き箸で、無理なくペースダウン
参考文献
Fogel A, et al. Br J Nutr. 2017:食べる速さと摂取量・体脂肪の関連。
Dallacker M, et al. JAMA Netw Open. 2023:家族の食卓+10分RCT。
Faith MS, et al. Obesity (Silver Spring). 2019:幼児のペース介入(RePace)。
和食で実装:一汁三菜・小分け・順番🥢
解説:和食は小鉢が多く、箸で少しずつ食べるので、一口が小さく、自然と食事時間が延びます。さらに、**小分け(小皿・小盛り)**は食べ過ぎのブレーキになりやすく、野菜→主菜→主食の順も取りやすい。器が大きいとつい多く食べてしまう傾向があるので、小さめの器×ゆっくりが基本です。
まとめ
箸+小鉢=一口が小さく、満腹サインが間に合う
小分け・小盛り=食べ過ぎにストッパー
野菜先食いで血糖の安定を後押し
参考文献
Hollands GJ, et al. Cochrane Database Syst Rev. 2015/2017:ポーション・食器サイズと摂取量。
Robinson E, et al. Am J Clin Nutr. 2014:食べる速さと摂取量(メタ解析)。
Imai S, et al. Nutr Diabetes. 2013:野菜先食いの効果。
実践編:+5回咀嚼メソッド📝
解説:いきなり「1口30回」はハードルが高いので、まずは今の回数に+5回から。これを1〜2週間続け、慣れたらまた+5回。置き箸・会話・タイマーなどの合図を使うと、無理なく続きます。和食の型に沿って汁物→野菜→主菜→主食の順で食べるのもおすすめです。
まとめ
Step1:まずは自分の平均回数を測る
Step2:2週間は「今+5回」をキープ
Step3:置き箸・会話・タイマーでペース維持
Step4:汁→野菜→主菜→主食の順で
参考文献
Robinson E, et al. Am J Clin Nutr. 2014:遅食と摂取量。
Dallacker M, et al. JAMA Netw Open. 2023:食卓時間+10分のRCT。
まとめ✅
まとめ
よく噛むことは、満腹ホルモン・脳のスイッチ・血糖・食後の消費エネルギーまで、いい影響を連鎖させる
箸を置く・小分けで食べる・野菜から食べる——この3つで過食を予防
今日からできる:一口+5回、和食+会話で食卓時間を10分延長、汁→野菜→主菜→主食
参考文献
総合:本文各節の文献を参照(メタ解析・RCTを優先)。
最後に一言
完璧じゃなくて大丈夫。“+5回”を積み重ねるだけで、体は少しずつ変わります。次回は、具体的な和食の献立例と器選びのコツを紹介します。🍚🥢
最後までお読みいただき、本当にありがとうございました。これからも「心と体を守る健康情報」を発信していきます。それでは、また次回の記事でお会いしましょう。